相場2026-07-07 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

機械設計と電気制御の年収相場(関西版)— 図面とPLCはいくらに換金されるか

この記事の要点

「設計に移れば、年収って上がるんですよね?」

この質問には、正確に答えると長くなります。短く答えるなら「上がる人と上がらない人がいて、分かれ目は職種名ではない」です。皆さま、求人票の「機械設計 月給35万円〜」という文字列を見て、「〜」の右側がどこまで伸びるのか、考えたことはありますか? 今回は関西エリアの機械設計・電気制御の年収相場を、「〜」の右側が何で決まるのかまで含めて解きほぐします。

先にお断りしておくと、本記事の金額はすべて目安値です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などの公的統計と、求人市場の相場観をもとに当メディアが整理したもので、統計値そのものではありません。個社・個人で大きく変動します。その前提で、地図としてお使いください。

0. 前提 — 「設計」「制御」という言葉の解像度を上げる

まず言葉の整理から。機械設計とひとことで言っても、中身は層になっています。構想設計(何をどう作るかを決める)→基本設計→詳細設計→製図・CADオペレーション。下の層ほど人が多く、上の層ほど希少で高い。「CADが使える」と「構想から任せられる」の間には、年収にして数百万円の距離があります。

電気制御も同様です。PLCのラダーを読める→既存プログラムを改造できる→新規ラインの制御設計を丸ごと組める→安全設計・ロボットティーチングまで見られる。この階段のどこに立っているかが、あなたの値段です。職種名ではなく階段の高さで値段が決まる——これが今回の記事の背骨です。

1. 相場の全体像 — 目安レンジ

その前提で、関西エリアの目安レンジを示します。

職域×段階年収の目安備考
CADオペレーター(指示のもと製図)350〜450万円派遣比率が高い層。正社員化で安定はするが上限も近い
機械設計(詳細設計を独力で)450〜600万円市場のボリュームゾーン。装置・治具設計の需要が厚い
機械設計(構想〜基本設計、後輩指導)600〜750万円大手・完成車系ならさらに上振れ
電気制御(PLC改造・デバッグ)450〜550万円保全出身者の参入ルートでもある
電気制御(新規ライン制御設計)550〜700万円慢性的な人材不足。ロボット対応でさらに加点
生産技術(工程設計・設備導入)500〜700万円設計と現場の橋渡し。EV転換投資で需要増

※当メディアが公的統計・求人市場をもとに整理した目安値です。統計値ではありません。残業・手当・企業規模により大きく変動します。

ポイントは2つです。1つ、同じ職種名の中に300万円の幅があること。2つ、電気制御の上段は機械設計の同段より品薄で、値がつきやすいことです。世の中に「機械科出身」は多く「電気制御を独力で組める人」は少ない。需給の差がそのまま出ています。

2. 関西の地の利 — なぜ相場が崩れにくいのか

関西の設計・制御人材の相場には、構造的な支えがあります。設備投資が止まらない土地だからです。化学コンビナートの更新投資、鉄鋼重工業の増産投資、精密電機の新ライン投資——新しい設備を作る限り、装置を設計する人と、動かす制御を組む人が必要になります。特にいまの局面では、町工場の技能継承・高精度化で「設備を作り替える」需要が積み上がっており、生産技術・制御設計は関西全体で品薄が続いています。

もう一つの地の利は、メーカーの階層が深いことです。完成車・大手部品・中堅・装置メーカー・設計事務所——同じスキルでも所属先の階層で待遇が変わるため、「スキルを変えずに所属を変える」だけで年収が動く余地があります。ただし、ここには罠もあります。次の章で説明します。

3. 上がる転職・上がらない転職の分かれ目

率直に言うと、設計・制御の転職で年収が上がらないパターンは決まっています。階段の同じ段のまま、横に移るだけの転職です。詳細設計者が別の会社で詳細設計をする。PLC改造の人が別の工場でPLC改造をする。これでは需給の波で多少上下するだけで、構造的には変わりません。

上がる転職には型があります。型1:段を上げる転職。詳細設計→構想設計へ、改造→新規設計へ。ポイントは、いまの職場で「一段上の仕事を部分的にでも経験してから」動くことです。実績ゼロで段を上げる転職は通りにくい。半年でいいので、上の段の仕事を拾ってから出る。型2:品薄の交差点に立つ転職。機械も分かる制御屋、制御も分かる機械屋、設計も分かる生産技術。2つの領域の交差点は常に品薄です。型3:成長分野に段ごと移る転職。同じ装置設計でも、半導体製造装置や電池製造設備の文脈が付くと値段が変わります。関西の新分野マップも参考にしてください。

4. 現場出身から設計・制御へ — 入口は実在する

「自分はオペレーター・保全出身だが、設計側に行けるのか」という質問もよく受けます。答えは「入口は実在する。ただし入口の位置を間違えないこと」です。

現場から機械設計への最短入口は、治具・設備改善の経験です。現場で治具を考えた、簡単な図面を描いた、設備トラブルの対策を形にした——この経験に2D/3D CADの学習を足すと、装置メーカーや設計事務所の「現場が分かる設計者候補」の枠に入れます。電気制御への入口はもっと太くて、保全からの転身が王道です。設備保全でPLCに触れてきた方は、制御設計の下段にそのまま接続できます。第二種電気工事士+PLCの実務経験は、この市場で通用する立派な組み合わせです。

誤解がないように申し上げると、40代からCADを覚えて未経験で設計者になる、という道はかなり険しいです。入口が実在するのは「現場で設計・制御に隣接する経験を積んできた人」。いま現場にいる方は、転職活動の前に、いまの職場で隣接経験を拾えないかを先に考えてください。それが一番安い投資です。

5. 面接での値段の上げ方 — 数字で語る

最後に、面接での話をします。設計・制御の面接で値段を決めるのは、資格の列挙ではなく実績の数字です。「設計ができます」ではなく「◯◯装置の詳細設計を年間◯件、構想から任された案件が◯件」。「PLCができます」ではなく「◯◯ラインの新規立ち上げで制御盤◯面、タッチパネル画面設計まで担当」。数字が入った瞬間、面接官はあなたを階段のどの段に置くべきか判断できます。逆に数字がないと、安全側に低く見積もられます。値切られるのではなく、値付けに失敗している——このパターンが本当に多いのです。

6. 90日の学習ロードマップ — 現場から図面側への最初の一歩

「入口は実在する」と書いたので、最初の90日の具体例も置いておきます。あくまで一例ですが、迷って何も始めないより、ずっとましなはずです。

電気制御コース(保全経験者向け)。最初の30日:第二種電気工事士の筆記対策を毎日30分(過去問アプリで十分です)。次の30日:職場のPLCのラダーを「読む」機会を意図的に作る。保全記録を書くとき、どのデバイスがどう動いたかまで書く癖をつける。最後の30日:技能試験対策と並行して、社内の制御担当者に「改造案件があったら見学させてほしい」と頼む。この90日で、履歴書に書ける資格の見込みと、面接で語れる実体験の両方が手に入ります。

機械設計コース(治具・改善経験者向け)。最初の30日:無料の3D CAD(個人利用可のもの)を自宅PCに入れ、身の回りの部品を1日1個モデリングする。次の30日:過去に自分が関わった治具・改善を3件、簡単な図面と「なぜその形にしたか」のメモに起こす。これがそのままポートフォリオになります。最後の30日:装置メーカー・設計事務所の求人を20件読み、要求スキルと自分の距離を測る。応募はまだしなくていい。距離を測るのが目的です。

90日やってみて「楽しくなかった」なら、それも収穫です。図面側は向いていなかったと分かれば、現場側の階段(リーダー・保全・品質)に集中投資できる。90日は、進路の分岐を確かめるための投資だと思ってください。

90日続けるコツも一つだけ。教材を増やさないことです。過去問アプリ1本、CADソフト1本。学習が続かない原因の大半は、意思の弱さではなく選択肢の多さです。道具を1つに絞って、毎日同じ時間に15分。夜勤のある生活では「起きてから仕事まで」の時間帯が最も安定します。

(結論)職種名ではなく、階段の段を上げる

まとめます。①年収は職種名ではなく「階段の段」で決まる。②関西は設備投資が続く限り相場が支えられる、設計・制御にとって地の利のある土地。③上がる転職は「段を上げる・交差点に立つ・成長分野に移る」の3型。④現場出身の入口は治具改善(→機械設計)と保全(→電気制御)。⑤面接では数字で値付けする。

図面もラダーも、書ける人の頭の中身は外から見えません。だからこそ、自分の段を正しく言葉と数字にした人から順に、正しい値段がつきます。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の診断で、自分がどの段にいて、どの型が合うのかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 機械設計に移れば年収は上がる?

上がる人と上がらない人がいて、分かれ目は職種名ではありません。年収はスキルの階段の段で決まり、同じ職種名の中でも約300万円の幅があります。CADオペレーター段の横移動では上がりにくく、詳細設計から構想設計へ、改造から新規設計へと段を上げる転職が有効です。品薄の交差点に立つ、成長分野に段ごと移るのも上がる型とされています。

Q. 関西の機械設計・電気制御の年収相場は?

当メディアが公的統計や求人市場をもとに整理した目安値では、CADオペレーターが350〜450万円、詳細設計を独力で行う機械設計が450〜600万円、構想〜基本設計は600〜750万円です。電気制御はPLC改造・デバッグが450〜550万円、新規ライン制御設計が550〜700万円。生産技術は500〜700万円が目安です。いずれも残業・手当・企業規模で大きく変動します。

Q. 現場出身から設計・制御に転身できる?

入口は実在しますが、位置を間違えないことが大切です。機械設計への最短入口は治具・設備改善の経験に2D/3D CAD学習を足すこと、電気制御は保全からの転身が王道で、第二種電気工事士とPLC実務経験の組み合わせが通用します。ただし40代からCAD未経験で設計者になる道は険しく、まずは今の職場で隣接経験を拾うのが一番安い投資です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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